縦笛侍の日記

縦笛侍 伊藤粒太 LYUTA ITO blokfluit

オールドフィンガリングの楽器

リコーダー(フラウト・ドルチェ、縦笛)には大雑把に分けて、モダンフィンガリングとオールドフィンガリングがあります。
どっちが良いとか悪いとかではなく、二種類あります。
その名のとおりオールドフィンガリングは昔の指使いですね。バロック時代の人が使っていた指使いです。モダンフィンガリングは20世紀に考案された指使いです。
比較するとオールドフィンガリングのほうが複雑で難しいけれど音程の微調整や音色のニュアンス変化などはしやすく、モダンフィンガリングのほうは速いパッセージなどは容易で習得しやすいけれど音程の微調整や音色のニュアンスを付けたりなどはやや苦手です。またオールドフィンガリングは楽器ごとに少し指が違ったりして楽器ごとの個性が際立ちますが、モダンフィンガリングはいちおう規格が統一されています。
もちろんフィンガリングの違いだけでなく個体差もあったり、ヴォイシングの違いで楽器の性格が色々だったりするので一概には言えないので、上記の説明はあくまで「大雑把な」説明です。

さて当方もこのたびオールドフィンガリングの楽器を導入しました。

recorder

copy after Rottenburgh


ロッテンブルクという18世紀の製作者の楽器のコピーで、かなりオリジナルに近い状態のコピーだと思われます。
コピー楽器にもいろいろあって、オリジナルを忠実にコピーしたものもあれば、オリジナルを参考にしつつ現代のニーズ(音量とか均質な音色とか)に合わせて変更を加えたものもあります。
ちなみにメック社もロッテンブルクモデルを販売していますが、あれは忠実なコピーではなく、ほぼメックのオリジナルで、音色も全然違います(※だから悪いというわけではなく用途が違うものです)。
今回のこの楽器は実に繊細で、音ごとに音色が違ったり音程にクセがあったりなどしますし、音量は出ないかわりに吹き方で音色が微妙に変化して、色彩感豊かな音楽を奏でられます。大きなホールでの演奏には向きませんが、バロック時代のようなサロン的空間での演奏には適します。
そしてなにより、バロック音楽を学ぶうえで、当時使われていた楽器の特徴(欠点も含めて)を感じることができる楽器に触れることは非常に大事です。仕事で演奏するときは音量の大きな現代のニーズに合った楽器を使うことになんの問題もありませんが、勉強の段階では是非、オールドフィンガリングの ちょっと面倒だけど微妙で豊かな音楽表現が出来る楽器 で練習してみてほしいと思います。昔の人が「何を大事にしていたのか」について、きっと感じることがあるに違いありません。

注)オールドフィンガリングの楽器がすべて優れているわけではありません。
  モダンフィンガリングの楽器では微妙なニュアンスが付けられないとも限りません。
  あくまで大雑把な傾向の話です。