縦笛侍の日記

縦笛侍 伊藤粒太 LYUTA ITO blokfluit

まもなくSamurai Baroque Project『テレマンの宴』開催! 2024/02/17 Sat. 14時開演 ソノリウム(永福町駅徒歩7分)

2024年2月17日(土) 14時開演
永福町のソノリウムにて『テレマンの宴』が開催されます。
バロック時代にバッハなんかよりもずっと有名だった人気作曲家テレマンの珠玉の室内楽曲を、国内一流の演奏家による演奏でお楽しみいただけます。
みなさまどうぞお越しください♪



この演奏会は、古楽器奏者 伊藤粒太 Lyuta Ito が34年の沈黙を破って臨む、

【伊藤粒太はなぜ34年の沈黙を破るのか】

19歳でオランダに渡りチェンバロヴィオラ・ダ・ガンバ演奏を学んで4年目、アムステルダム・コンセルトヘバウでヴィオラ・ダ・ガンバ・リサイタルを行ったのが1990年2月9日。月蝕の日だった。
それから34年目の2月、復活の演奏会を、素敵な仲間たちと共に為す。

あのとき、理想を胸に抱いて海を渡った若者の幻滅は深かった。心より尊敬していた師匠たちの現実。日本人として西洋音楽に携わることについての葛藤。すべてが理想には遠かった。

そこから目を叛けるように、血も国籍も問わない写真の世界に転向して数々の現場で撮影に携わってきた。しかしコンサート撮影のたびに、自分がいるべき場所が違うのではないか、舞台の上に戻りたいという思いが募る。
そしてコロナ禍の中で仕事が休止し時間だけが過ぎた。このままでいいのか、という自問。残りの人生を悔いなく生きたいという渇望。時間だけはあった二年間、指を馴らし、練習に勤しんだ。時間があったということはコロナ禍という不幸の中の幸いだったかもしれない。

34年の葛藤を経て戻る舞台。
いや、たいしたことではない。ただ、テレマン室内楽を演奏するだけだ。世の中の片隅で行われる小さな音楽会にすぎない。でも、その小さなイベントに、ひとりの男の人生がゆだねられる。
音楽は深くふかく暮れ沈む、光と闇と歴史が交錯する墓場のごとき大円団だ。
そこにどんな価値があるのか意味があるのか、そんなことは問うても答はない。人が生きることになんの意味も見出せないのと同じこと。
それでも、舞台があって、音楽があって、人々が集う、そのことにきっと言葉には尽くせない希望があるにちがいない、と信じるのみであります。